代表理事挨拶

「世界平和の礎は、健康であるべきだ」

そのような強い信念に後押しされ、WHO(世界保健機構)は創設された。言うまでもなく、この背景には二度にわたる世界大戦への大いなる反省がある。

続けて1948年に発表されたWHO憲章の中で、健康は次のように定義された。

「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(=Well-Being)であることをいう」

それから80年が経ち、世界はずいぶん平和に、そして豊かになった。しかし、ここであえて問いたい。私たちはどれほど健康になっただろうか? 確かに寿命は延びた。しかし、さきほどのWHOの定義に従えば、健康とは単に病気が減って寿命がのびることではなく、どれほど満たされるようになったか(=Well-Being)で判断されるものである。

ここに一枚のグラフがある。戦後日本における「一人当たりGDP」と「主観的Well-Being」の推移を示したものだ。

出典:Diener and Biswas-Diener. (2002) Social Indicators Research 57:2;119-169

単純にこのグラフを眺めると、2つの特徴がみてとれるだろう。すなわち、1)一人当たりGDPは右肩上がりの成長を遂げてきたこと、2)ところが実感としてのWell-being(=生活満足度)はほとんど改善していないことである。何より衝撃的なのは、これは何も日本に限った現象ではなく、諸外国でも同様のパターンがみられるということだ。

本財団の問題意識は、まさにこのグラフに象徴されている。すなわち、「なぜWHOが定義した意味での健康は長年にわたり改善されていないのか?」、「そもそもこのデータは正しいのか?」という気宇壮大なテーマについて、科学的に明らかにしていくことで、世界の健康や平和に貢献することを目指すものである。

2018年9月21日
公益財団法⼈ Well-being for Planet Earth
代表理事 石川 善樹